UXリサーチをWebサイトリニューアルに活かす方法

  1. UXリサーチをWebサイトリニューアルに活かす方法

目次

UXリサーチを取り入れたプロダクト・サービスデザインの工程

UXリサーチとは

UXリサーチは、プロダクトやサービスにおけるユーザー体験(UX)を明らかにしていく調査のことです。UXリサーチには、さまざまなリサーチ手法があります。目的に応じた手法を選んでデータ収集・分析を行うことで、適切な改善方法の立案ができます。

図1 UXリサーチを活用したプロダクト・サービスの工程
図1_UXリサーチを活用したプロダクト・サービスの工程

図2 UXリサーチを活用したプロダクト・サービスの工程:タスクの実施例との関係
図2_UXリサーチを活用したプロダクト・サービスの工程

UXリサーチを活用したプロダクト・サービスの各ステップで実施するタスク概要

ステップ1:プロジェクト計画
「プロジェクト計画」のステップでは、プロジェクトの目的・ゴール設定、スケジュール、予算、リソースを定義し、プロジェクト計画書としてまとめます。

ステップ2:探索的リサーチ
「利用状況の把握と明示」のステップでは、プロジェクト計画の制約や前提を踏まえて「探索的リサーチ」を行います。具体的にはリサーチ対象のペルソナやテーマを設定し、観察、インタビュー、ワークショップ、デスクリサーチなどの方法を用いて調査します。プロジェクトの予算やスケジュール、調査内容に応じて適切な手法を選択することが大切です。

ステップ3:コンセプトデザイン
「ユーザーの要求事項の明示」ステップでは、探索的リサーチの結果を踏まえ、プロダクトやサービスの価値を「コンセプトデザイン」としてまとめます。まとめ方は、バリュープロポジションキャンパスと呼ばれる手法等やその過程でカスタマージャーニーマップなどを駆使してまとめていきます。

ステップ4:プロトタイプ作成
「ユーザーの要求を満たす解決策の作成」ステップでは、コンセプトデザインを踏まえて、プロダクトやサービスのMVP(Minimum Viable Product)を決定し、誰にどんな価値を提供するかをはっきりさせていきます。そのうえで、ストーリーマッピングやデザインカンプなどのプロトタイプ作成し、ユーザーがプロトタイプを評価できるように準備をしていきます。

ステップ5:評価的リサーチ
「要求事項に対する計画の評価」ステップでは、前工程で作成したプロトタイプやデザインカンプ、ストーリーボードをもとに評価的リサーチを実施します。評価的リサーチを実施する上では、評価対象が明示的にわかるような設計をすることが重要です。手段としては、アンケート、ABテスト、インタビューなどの手法があります。

リリース判断
「ユーザーの要求事項を満たすプロダクト・サービス」のステップでは、ステップ5までの評価を踏まえて、リリースするか、適切なステップに戻るかをジャッジします。

従来のWebサイトリニューアルの工程とUXリサーチを取り入れた工程の違いについて

UXリサーチを取り入れたプロダクトやサービス工程を踏まえて、従来のWebサイトリニューアルとUXリサーチの取り入れ方について解説していきます。

図3 従来のWebサイトリニューアルの進め方
図3_従来のWebサイトリニューアルの進め方

従来のWebサイトリニューアル進行におけるタスクの概要

従来のWebサイトリニューアルは運用フェーズまでに大きく3つのフェーズがあります。

  1. プロジェクト計画
  2. 戦略策定
  3. 設計・開発

「1.プロジェクト計画」と「2.戦略策定」は、UXリサーチを取り入れたプロダクト・サービスの工程のステップ1~3に該当します。検討するテーマや定義する内容は異なりますが、プロダクトやサービスのデザイン工程(ステップ1~3)と従来のWebサイトリニューアルの工程(フェーズ1~2)に大きな違いはありません。

図4_従来のWebサイトリニューアルの進め方

「2.戦略策定」でサイトの方向性や施策などを定義した上で、「3.設計・開発」の工程へ進み、最終的にリリースという流れになります。

UXリサーチを取り入れたWebサイトリニューアルの進め方

従来のWebサイトリニューアルの工程にUXリサーチを取れ入れる場合は、「2.戦略策定」と「3.設計・開発」の工程の間にUXリサーチの工程を追加します。

図5_UXリサーチを取り入れたWebサイトリニューアルの進め方

具体的には、UXリサーチによるプロダクト・サービスの工程の「ステップ4.プロトタイプ作成」と「ステップ5. 評価的リサーチ」が該当します。

図6_UXリサーチを取り入れたWebサイトリニューアルの進め方

戦略策定で決定した効果インパクトのありそうな施策やコンテンツ、ページを中止にプロトタイプを作成し、ユーザインタビューやユーザテスト検証を行うといった「仮説の検証」工程が追加されることが従来の進め方と異なる点です。

WebサイトリニューアルにUXリサーチを実施することが重要な理由

UXリサーチをWebサイトリニューアルに取り入れる理由を解説する前に、Webサイトリニューアルのよくある失敗例を紹介します。

よくある失敗例

よくある失敗例としては、下の図のようなものがあげられます。

図7_よくある失敗例

Webサイトリニューアルが当初の仮説や計画通りに進むとは限りません。成果が予想を下回ってしまった場合、軌道修正のために必要な改修費がリニューアル費と同等額掛かってしまうなどのケースも少なくありません。このような失敗例を踏まえて、UXリサーチを取り入れる重要性について解説します。

UXリサーチを取り入れる重要性と理由

図8_UXリサーチを取り入れる理由

UXリサーチの工程を取り入れることで大きくリニューアルでリリースを実施する前にプロトタイプで仮説検証を行いうため、リニューアルの失敗リスクを最小限にすることが出来ます。また、設計や開発フェーズでも戦略策定フェーズに議論が遡る回避にも繋がります。

特に静的ページのWebサイトではなく、動的(CMSやシステム組み込みが必要)なWebサイトの場合はよりコストがかかる傾向にあるため、UXリサーチの工程を導入し小さく仮説検証することが重要だと考えます。

UXリサーチを取り入れたWebサイトリニューアルプロジェクトのつくりかた

改めて、UXリサーチを取り入れた場合のWebサイトリニューアルの工程を振り返りながら、プロトタイプ作成とユーザテスト・評価工程の具体的な内容について解説していきます。

UXリサーチを取り入れたWebサイトリニューアル工程
図9_UXリサーチを取り入れたWebサイトリニューアル工程

戦略策定フェーズと設計・開発フェーズの間にUXリサーチの工程を取り入れます。戦略策定フェーズで特にKPIにインパクトの大きい施策、コンテンツ、ページをピックアップしてプロトタイプ作成し、プロトタイプをもとにユーザテスト・評価を行います。良好な結果が得られた場合、次の工程である設計・開発フェーズに進み、仮説とギャップがある場合、戦略策定フェーズに戻り、施策の再検討または、プロトタイプなどの修正を行います。


プロジェクト計画の制約を踏まえ、場合によりリニューアル自体をペンディングにするなどのオプションも見据えて判断していくことが必要です。

プロトタイプ作成について

Webサイトリニューアルの場合、プロトタイプはデザインカンプではなく、ワイヤーフレームで対応するケースも多くあります。検証する内容によってアウトプットの方法は決定することとなりますが、Webサイトリニューアルにおいてプロトタイプで検証する内容が主に、ユーザビリティ、機能および回遊動線などを評価することが多いためです。

コンセプトやデザインの方向性について検証したい場合は、ストーリーボードやデザインラフなどが有効です。コンテンツやコピーを評価したい場合、コンテンツの企画書や原稿、コピーなどをユーザーインタビューで評価していきます。

ユーザーテストについて

ユーザーテストは、ターゲットとなるユーザーに利用してもらい評価するための手法です。ユーザーが実際にどのような体験をするのか、想定して通りの操作ができているかなど直接的な行動結果を調査することが出来ます。WebサイトリニューアルにおいてUXリサーチを実施するなかでは、とても有効的な調査で実施するステップにより様々な検証が可能です。

ユーザーテストの流れ

図10_ユーザテストの流れ

評価項目やテストシナリオの設計、モニター募集を経て、テスト、評価・レポーティングを行います。評価次第で次のステップに進むか、または必要なステップまで戻り、再検討するかの判断も必要になります。

ユーザーインタビューについて

アンケートや数値傾向を明確にする調査とは異なり、ユーザーの潜在的ニーズや自社のサービス・Webサイトが抱える課題の深掘りをすることが可能な調査手法です。Webサイトリニューアルでは、操作性以外のコピーやビジュアルの評価などを行いたい場合に有効です。手法としては、デプスインタビュー(1対1)やフォーカスグループインタビュー(複数人)があります。

ユーザーテスト&ユーザーインタビューの補足

ユーザーテストやユーザーインタビューは、評価・検証フェーズだけではなく、戦略フェーズで現状課題を明らかにする場合にも有効です。「現状課題を明らかにするためのテスト」と「仮説検証するためのテスト」を使い分けることで仮説の精度をあげ、より成果が出るリニューアルを実現できます。

まとめ

UXリサーチをWebサイトリニューアルに取り入れる理由

ユーザーインタビューやプロトタイプ作成の工程を従来のWebサイトリニューアルの工程に取り入れることで、リリースして初めて気づくといったような大きな失敗リスクを減らすことができます。

UXリサーチの結果を踏まえてプロトタイプの修正や戦略の練り直しなど適切な工程まで戻ることが重要です。

プロジェクト計画時点で、すでにタイト計画により、十分なUXリサーチ、検証プロセスとその結果により前工程に戻ることができないケースも多くあります。一方で、タイトなプロジェクトでも「ここは内部の仮説で行こう」「ここはユーザーテストを実施しよう」と切り分けをしながら進めることが可能です。

このように、少しでもUXリサーチのプロセスを組み入れることにより、ステークホルダーがプロジェクトを遂行することではなく、プロジェクトの目的達成に向き合うことができるでしょう。

UXリサーチを取り入れたWebサイトリニューアルプロジェクトの計画立案やUXリサーチのご相談がございましたら、ぜひ、INIまでお問い合わせください。

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