元お笑い芸人のプロデューサーに聞く "ツッコミュニケーション"とは
この記事の目次
- 「お笑い芸人に、おれはなる!!」
- 「面白いことを考える」仕事がしたい
- プロデューサーは、前に出る縁の下の力持ち
- "ツッコミュニケーション"でプロデュースする
- 芸人も、社会人も同様に大変。だから・・・
早いもので、今回が現役大学生のわたし吉川がインテリジェントネットのいろいろな社員の方々にインタビューする企画の最終回です。
最後のお相手は、インテリジェントネットのプロデューサー、宮下 恵介さん。
実は宮下さんは、元お笑い芸人という経歴をお持ちのこれまた一風変わったビジネスマンなのです。
普段から、社内の雰囲気を和ませてくれる宮下さん。
元お笑い芸人だと聞いても、僕の中ではまったく疑いの余地がありませんでした(笑)
とはいえ、元芸人からインテリジェントネットでプロデューサーになるまでの約10年、
そのキャリア、非常に気になります。
今回はまずお笑い芸人を志したきっかけと、就職を決意した理由をインタビュー。
そして、お笑い芸人としてのキャリアでいまに活きる "ツッコミュニケーション"についてお話してもらいました。
「お笑い芸人に、おれはなる!!」
吉川:お忙しい中、ありがとうございます!よろしくお願いします!
宮下:はい、よろしくおねがいしまーす!
吉川:宮下さんがお笑い芸人をされていたという話は、本当に興味がありました。聞くのを楽しみにしていたんですよ~(笑)
宮下:(笑)
吉川:いつごろから、お笑い芸人をやりたいと思うようになったのですか?
宮下:お笑いをやりたいと思ったのは、結構遅くって。高校卒業してから音響の専門学校に通って、レコーディングエンジニアをやっていたんだけど、半年くらい経ったころに「あれ、これはおれのやりたいことではないな」って思ってしまって。それで悩んだ末に、「よし、お笑いやっちゃおう!」って思って学校を辞めたのが始まり。
吉川:どうして「お笑いやっちゃおう!」ってなったんですか!!(笑)
宮下:もともとお笑いは好きで、いわゆるクラスの"人気者"的存在だったから、周りの人からよく「お笑いやったらいいよ」って言ってもらえてた。(笑)中学生の時なんかはそんな風に言われても、とんでもない!って思って流していたけれど、自分が人を喜ばせたり、笑わせたりすることが得意だっていう自負は少なからずあって。
吉川:なるほど。自然と生まれるかもしれませんね、そういう自負は。
宮下:大きなきっかけになったのは、高校の卒業式で毎年卒業生がやる出し物だったの。有志でファッションショーとか色んな出し物をやる企画で、毎年最後は劇をやるんだけど、そこでおれが脚本を書いてミュージカルやることになって。
実は毎年そこまでウケがよくなかった劇の出し物だったんだけど、見事おれが書いた脚本、キャスティングがすごくウケて。この時に「気持ちいいわ!」ってすごく感じたんだよね。
吉川:なるほど、実際に肌で感じられたわけですね。
宮下:うん、でもその時はもう専門学校に進むことを決めていたし、半ば「お笑い良いなあ」っていう気持ちを引きずりながら専門学校に入学した。19歳の頃か。友達と組んで、M-1の予選とかに出てみるとかそういう感じで過ごしてた。
吉川:あんまり関係ない話かもしれないんですけど、(笑)「お笑いやるぞ!」ってなったら、まず何から始めるんですか?
宮下:そうだよね、わかんないよね、(笑)おれもわからなかったから、検索してみたりしてた。(笑)普通は事務所に入ったり、養成所に入ったりするわけなんだけど、お金がかかるから・・・。
なんかとんがっていたおれは最初mixiで相方を募集してみたりしてた。(笑)まあそれじゃやっぱり食っていけなかったから、いい相方を見つけるためにも養成所に入ることにした。
吉川:そうなんですね。(笑) 経済的にも、けっこう大変な生活になるんじゃないんですか?
宮下:うん。だからおれは週5でがっつりバイトしていたよ。(笑)その頃のお笑いでの収入は0どころかマイナスだからね・・・。生活費とか交際費でどんどん出ていくから。
吉川:その生活を7年間くらい続けていて・・・どうでしたか?
宮下:うん、まあ辛かったよね。(笑)もちろんウケれば楽しかったけれど、やっぱり大変だったなぁ。
「面白いことを考える」仕事がしたい。
吉川:そこからお笑いをやめるに至ったきっかけはあったんですか?
宮下:コンビ歴5年くらいだったんだけど、あまり実績を残せていない状況が続いていて。そこでちょっとツテがあって、すこし有名な人とトリオを組むことになったの。でもその人とあまりお笑いに対する価値観がそぐわなくて、やっているのが楽しくなくなってきちゃったんだよね。よくある話だけれど、価値観の相違。で、それに悩んでいるうちに、ふと「就職するのも悪くないな」って思いが湧き上がってきてしまった。
吉川:ふむ・・・。
宮下:もともと良い意味でも悪い意味でも器用だったから、ビジネスマンとして働く自分を想像しても、ふつうに面白くなりそうだなって思えて。お笑いは結果的にやめることになったけれど、当時"逃げ"ている感覚はなかったな。そこから、自分に何が向いているのか、何がしたいのかを考える期間に入った。自分を見つめ直しに。
具体的には、
「面白いことを考える」
「お笑いで培ったコミュニケーション能力が活かされる」
仕事がいいなと思って探していた。
吉川:それでWeb業界にたどり着いたのはなぜですか?
宮下:そういう会社を色々調べていくうちに、Web業界のベンチャー感がある会社で、面白そうな会社をいくつか見つけることができて。だから最初からWebに興味があったわけではないけれど、気になった会社を調べているうちに、Webっていうものに対する知識が深まって、興味がわいたって感じかな。
それで、Web業界に入るなら知識は必要かと思って、職業訓練校に6ヶ月くらい通ってWebの勉強をしながら職を探すことにして。それと、訓練校に通っているうちに、「自分は職人のようにものづくりを極めたいタイプでもないな」っていうことにも気づくことができて、ディレクター職希望っていう軸ももって探すようになった。
職業訓練校を卒業してからは、日本仕事百科っていうWebサイトを参考にしたりして、すごく魅力を感じる会社を見つけた。でも、この歳で完全にWeb未経験ともなると、やっぱりハードルが高くって、そこの選考には最終ギリギリ受かることができなかった。この時はけっこう落ち込んだよ。
吉川:未経験っていうのがネックになってしまいますよね、どうしても。
宮下:そうだね。それからは、もちろん今までの軸はそのままに、自分が共感できる経営理念をしっかりもっている会社を探そうと思うようになって、やっとインテリにたどり着いたわけ。
吉川:インテリも未経験者採用には慎重でしたか?
宮下:本人に聞いてみないとわからないけど、代表の和田さんも迷っていたとは思う。ディレクター志望だし、元お笑い芸人だしね。(笑)
吉川:(笑)でも、入社できたんですね。
宮下:うん、タイミングやいろんな条件で運が良かったところもあるよね。スキルは勉強していたけれど、まぁすごいわけじゃもちろんないし、インテリが大切にしているカルチャーフィットというところを評価してもらったところが大きいかな。インテリは面接が長いんだけど、自分のときもがっちり話してもらった。3時間くらい?仕事っていう人生で長い時間をつかうものだから、お互い価値観があわないと不幸だよねって。
それで、最初はアシスタントディレクターとして入社することになって、徳永さんのアシスタントだった。事前に多少の知識をつけていたものの、社会人基礎能力みたいなものは足りてなかったから大変だったよ。でも、徳永さんの指導のおかげでたくさん吸収しながら仕事ができたと思っている。徳永さんは丁度いいくらいの負荷をかけるのが上手な上司で、本当に。(笑)それで、ちゃんとやれば褒めてくれるからね。
プロデューサーは、前に出る縁の下の力持ち
吉川:宮下さんは今、プロデューサーとして働いていらっしゃいますよね。
宮下:そうだね。しばらくの間アシスタントディレクターを経てプロデューサーチームに異動して。御船さんのインタビューにもあったけれど、プロデューサーの仕事である"楽しくする演出"は会社にとって大事だよね。会社によって意味合いは全然違うんだと思うけれど、おれは「面白いことを考える」仕事だと思っている。
吉川:どこの会社もどっかの過程でやっていることではあるとは思いますけど、意外と目立たないというか・・・。僕も御船さんのインタビューを通じてやっと認識したって感じです。
宮下:プロデューサーには仕事の成果物たるものがはっきりあるわけではないからね。「このサイトは、僕がプロデュースしたのです。」って言われても、業界の人以外だと「はぁ・・・」ってなるじゃん?(笑)
吉川:そうですね(笑) どうしても直接作っているデザイナーさんとかに脚光はあたりがちなんですかね。
宮下:ただそこは「縁の下の力持ち」的な側面はあるよね。と言いつつ、クライアントの前にはある意味一番出る立場ではあるから、前に出る縁の下の力持ちなんだよね。Webに関する専門的な知識はもちろん、世の中の仕組みとかに関する情報収集は怠らないように必死だよ。
吉川:実際作っている人からしたら、プロデューサーやディレクターの存在はかなり大きいです。その存在があるから「ガリガリ作りたい!」っていう気持ちを思いっきり仕事にできます。作り手は、思いっきりやらせてもらえてるって感覚を大切にして、それに対する感謝の気持ち共有できていればいいですね。
宮下:うん、そうだね。
"ツッコミュニケーション"でプロデュースする
吉川:お笑い芸人としての経験が、今の仕事に活きているなと思うことはありますか?
宮下:お笑いの経験、というよりも「ツッコミ」の力を磨いてきたことが活きていると思ってる。(笑)
吉川:かなり興味深いです(笑)
宮下:まず、ツッコミってすごく得だと思っていて。(笑)ツッコミがちゃんとできる人って、希少なのよ。ボケる人の1/20くらいしかいないの。(笑)「ちゃんと」っていうのは、4、5人くらいの集団で半強制的にツッコミにならざるを得ない人とは別ね。そういう人は「なんでだよ」くらいしか言えない人。(笑)自分がいつもツッコミ側にいたいと思って鍛えていたから、ツッコミ力が磨かれていったわけ。
吉川:(笑)
宮下:ちゃんとしたツッコミに必要な能力は2つあるの。1つは、ボケてる人が何を面白いと思ってボケているかを判断すること。もう1つは、こっちのほうがむずかしいんだけど、それを周りの人にどう表現すればそれが面白く伝わるか。この2つを同時に考えて瞬時に表現する能力だと思っていて。
それで、それが仕事にどう繋がっているかっていう話ね。
ツッコミ力を磨くとまず、相手が何をもって発言をしているかを探れるようになる。今相手が言っていることを的確に把握して、そこから相手の細かい、でも重要な、心情変化も読み取れるようになる。そして、それを端的に、明快に第三者に表現するのが上手になる。
吉川:なるほどー。ちなみに、入社前にツッコミュニケーション講座なるものを開いたことがあるそうですね。(笑)
宮下:そう(笑)。ツッコミに必要な能力って、本当にコミュニケーションに活きると思っていたから。あと、単純に楽しくコミュニケーションをとることって仕事する上でも大切かなと思うから。やっぱり楽しい人と仕事がしたいじゃん。(笑) スキルとか知識が出遅れている分、おれはそういうところに自分の役割を見出だしたいと思っている。
吉川:いいですね。そして、ツッコミュニケーション講座はぜひ社内でも開いてほしいです。(笑)
宮下:そうね。いつか。(笑)部下とか後輩っていう立場だと、どうしても上司や先輩の意見を鵜呑みにしがちと言われるけれど、コミュニケーションに気を配っていれば、上司や先輩の発言の背景にも気をくばるようになるから、仕事で上司が何か「違うな」って発言をしたり、「本当はもっとこんなことを伝えたいんじゃないかな」って思った時に、ちゃんとそれを伝えるように最近は意識しているよ。
芸人も、社会人も同様に大変。だから・・・
吉川:自らも「紆余曲折の多いキャリア」とおっしゃっていましたが、挫折などに負けずにセルフモチベートする鍵とかありますか。
宮下:そうだね。新しいネタを考えて披露してはウケを取れず、でも、来週にはまた公演が控えているというような。自分が一生懸命作ったものを否定され続けるから、挫折耐性は人よりついたのかな。(笑)
宮下:どんなことでも、本気でやってみれば苦労に直面するよね。だから、大変なことがあった時にどうアプローチするかのほうが大切だと思っていて。さっきも言った通り、芸人時代は失敗してもアウトプットが短いスパンで訪れていたから、落ち込んでいる暇なんてなかった。だから、落ち込まずに切り替えるクセはついたかもね。
吉川:そこまで短いスパンでアウトプットを繰り返さないといけないっていう状況は、確かに特別ですね。苦しい芸人時代だったかもしれないけれど、そのおかげで宮下さんが今こんなに活き活きと働かれているのかなと考えると、すごくポジティブな気持ちを分けてもらったような気分になりました。
ありがとうございました!!
初めてお会いした時から、本当にコミュニケーション能力が高い方だと思っていたので、インテリのプロデューサーはとても適任なのではないかと、勝手に思っていました。(笑)
インタビューをしてみると思った通り、お笑いを科学的に見て解説してくれたり、興味深い内容が盛りだくさんで、とても会話が弾んで楽しかった時間でした。まさに、インタビューを楽しくプロデュースしていただきました!